クリニックでの日々

中医師試験を目指そうと決意してから、分厚いテキストの文字を目で追い、
それをただ暗記する勉強法に限界を感じてきた頃、どうにかこれを実践しながら学ぶことはできないかと悩んだ挙句、
履歴書片手に、なんのつてもコネもなしに突然飛び込んだ漢方クリニック。
それが長年ボランティアをすることになった香港の中環(セントラル)にある新華中医診所有限公司でした。

日本人患者さんのご案内やお薬の飲み方の説明、電話応対、予約の手配などをし、
それ以外の時間は薬剤師さんがお薬の調合をしているのを横で見せてもらっていました。
今までのように机の上で文字とにらめっこしていたときとは違って実際に生薬を見たり触ったりしたことは、
薬の名前を飛躍的に覚えられるきっかけとなりました。
また、中医師の発行した処方箋を見て、どんな病気の患者さんに出された方剤かを即座に頭の中で考える訓練を
していました。

そのうち日本人患者さんがどんどん増えていったこともあり、中医師の先生からの依頼で、通訳として診察に一緒に
入らせていただくことになりました。
実際に患者様のからだの具合をお聞きしながら、舌を見せていただきながら
中医師が処方する方剤をメモに取り、方剤を患者さんと紐つけながら覚えていきました。

また、患者さんのいない時間は中医師の先生にテキストの質問をしたり、
先ほど診た患者さんの診察で疑問に思ったことなどを一つ一つ丁寧に教えていただいていました。
とても優秀で本当に心優しい2人の女医さんにつきっきりで学んだことは、
何にも変えがたい一生の財産になったと本当に有難く、心から感謝してもしきれないほどです。

こうして無事 国際中医師試験に合格した後も、 通訳ボランティアと診断の実習を帰国する直前まで続けました。
また香港に行くチャンスがあったら、スーツケースに白衣を入れてこのクリニックへ直行し
朝から晩までボランティアをして恩返しをしたいなぁと思っています。